今治市営球場での第1試合は3回戦で唯一、初出場同士のカードとなった。強打のオール富山少年野球クラブ(富山)が2本塁打などで2ケタ得点を挙げ、粘る長浜少年野球団(大分)を振り切ってベスト8入りを果たした。
(本文&写真=鈴木秀樹)
■3回戦
◇8月10日◇今治市営球場
▽第1試合


逆転許すも即座に再逆転!強力打線が爆発
[富山]初出場
オール富山少年野球クラブ
140122=10
400003=7
長浜少年野球団
[大分]初出場
【オ】東鷹、高木、吉岡、舟崎-番口、安藤
【長】温壮、吉岡、温壮-吉岡、倉永
本塁打/松下、加藤(オ)
三塁打/東鷹(オ)
二塁打/加藤2(オ)、吉岡2、後藤、上田(長)
【評】1回表、オール富山少年野球クラブは四球で出塁した先頭打者の舟崎充主将を四番・加藤秀一郎が右越え二塁打でかえして先制。しかしその裏、長浜少年野球団が先頭の篠原ガリヨン莉之と吉岡聖真主将、六番・後藤宇多と上田陽太の連打などで4得点し逆転。それでも富山は直後の2回表、5年生の番口天舞が敵失で出塁すると、上田大駕と吉岡伶王の連打、さらに東鷹士朗の左越え三塁打、松下侑奨の中前打で4点を奪い再逆転した。富山は2回から登板の高木源司が粘り強い投球で長浜打線を5回までゼロで封じると、打線は4回に松下の右サク越え本塁打、5回には死球と上田の安打、舟崎主将の2点適時打、6回には加藤の右サク越え2ランと着実に加点し、リードを広げた。長浜は最終6回裏に後藤の安打と敵失、さらに大嶌航生、代打・溝辺凌久、篠原ガリヨンの3連打で3点を返すも、反撃はそこまで。富山が逃げ切って勝利を収めた。

1回表、富山の加藤が右中間に先制二塁打㊤。長浜は1回裏、温壮太郎のスクイズで三走・吉岡主将が生還して2対1と逆転㊦


1回裏二死二塁から、長浜は後藤㊤、上田㊦が連続適時二塁打を放つ


2回表一死二塁、富山は上田の安打㊤に続き、吉岡がセーフティスクイズを決めて㊦反撃を開始


2回裏、1点差に迫った富山は二死二塁から、東鷹士朗の適時三塁打で4対4に。投げては2回から救援の高木㊦が5回まで無失点の好投

6回裏、6点を追う長浜は4安打で3点。一番・篠原ガリヨンは、右前適時打から送球間に二塁を陥れた㊦

できれば注目されないままスルスルと…
「打線はなかなかだと思いますよ」
島村伸司監督が笑顔を見せる、オール富山少年野球クラブ。その言葉を裏付けるように、富山県大会では4試合トータルで47得点4失点という、圧倒的な内容で頂点に立った。
初出場となった大舞台では、富谷ストロングスポーツ少年団(宮城)との初戦こそ5対4の辛勝となったが、2回戦では岡山の強豪・岡山庭瀬シャークスに10対5と快勝。初戦にあった緊張も和らいだようで、「ようやく力を出せるようになってきました」(島村監督)。

幾分、リラックスした様子で迎えた3回戦を前に、指揮官は「できれば、それほど注目されないまま、するすると勝ち上がっていきたいですね」と言い、ニヤリと笑った。
初回に幸先よく先制。しかし、その裏にまさかの4失点で逆転を許した。ミスはなく、長浜少年野球団打線に打たれ、走られての失点だ。
それでも2回表、打ち合いは望むところとばかり、即座に4点を奪い再逆転。島村監督は試合後、「あそこですぐに取り返すことができたのは大きかったですね」と振り返り、選手たちの奮闘をたたえた。
4回には三番・松下侑奨のソロ、6回には四番・加藤秀一郎の2ランと、強力打線を引っ張る2人のスラッガーによる2本塁打をはじめ、長打力も光る一戦となった。
「良い形で勝つことができました」と島村監督もにっこり。「ここまでは順調です」
チーム創立6年目、全国初出場でベスト8入り。強力打線を武器に、島村監督の言葉どおり、今大会の台風の目になりつつある。

―Pickup Hero―
三番・四番が価値あるアベック弾


4回表。オール富山は無死から先頭の一番・舟崎主将が左前打で出塁した。一気に攻めたい場面。しかし、この流れが長浜の好守備により阻まれた。
次打者の三遊間に飛んだゴロを長浜のサード・古庄絢大郎がうまくさばくと、セカンドの木許泰志、さらにファーストの大嶌航生へと流れるような送球で併殺を完成させたのだ。
押せ押せムードから一転、二死走者なしへ。
5対4と勝ち越してはいるものの、オール富山のリードは1点。このままこの回の攻撃が3人で終われば、流れが相手に行ってもおかしくない場面だ。
ここで飛び出したのが、松下の一発だった(=上写真)。
「いつもは走者をかえすバッティングを心がけています」という松下だが、この場面では走者はいない。「少し、狙ってました」と笑顔を見せる。カウント2-0からの3球目。「スローボールが真ん中に来ました」。スローボールを待っていたわけではないというが、しっかりと引きつけて強振した。「うまく打てたと思います」
ソロではあったが、相手に傾きかけていた流れを一気に引き戻す、値千金の一発だった。

松下の一発が「中押し」なら、加藤の一撃は「ダメ押し」だった。
最終6回表、この回先頭の松下が四球を選んだ直後の打席。真ん中に来たスピードボールを思い切り引っ張った加藤の打球は、4回の松下の一発とも似た放物線を描いて相手外野手の頭上を越え、ライトの仮設フェンスを越える2ランとなった。
一塁走者の松下に続き、笑顔満面の加藤がダイヤモンドを一周し、ベンチで待つチームメートの祝福を受けた(=上写真左手前)。
「ホームランは1カ月ぶりくらいです。前の一本はランニングホームランだったから、サク越えは気持ち良かったです!」
加藤がニコニコと話す。8対4の場面ではあったが、相手は初回に一挙4点を奪われた強力打線。結果的にダメを押すことになった、こちらも価値ある一本だった。
「目標は全国制覇です」
松下と加藤が異口同音に、同じセリフを口にした。ナイン全員、思いは同じだ。全国大会初出場ながら、勝負強さが際立つ強力打線を最大の武器に、大目標にまたひとつ近づいた。その可能性を感じさせる、2本の本塁打だった。
―Good Loser―
猛追及ばず「やはり勝ちたかった」

開会式では、吉岡聖真主将が見事な選手宣誓を披露した長浜少年野球団。先制された初回、即座に逆転したものの、再逆転を許し、その後は追いつくことができないまま戦いを終えることとなった。
「いい試合でしたが…勝ちたかったですね」
吉岡貴政監督が絞り出すようにつぶやいた。
「全国大会に出るチームがどこも強いことは間違いない。とにかく全力で、自分たちの野球をしよう、と子どもたちと話していました。守備でミスをしないことを一番に、足を絡めて攻め、継投でかわしていく戦いです。ただ、相手の打線が良く、失点は防ぎきれなかったですね」
富山の13安打に対して、こちらも12安打と、安打数では肉薄。鍛えられた守備力と、積極的な走塁も披露したほか、最終回には6点差をものともしない気迫を見せ、4安打3得点の猛攻で応援団を沸かせた。
「予選から、とにかくしのいで、逆転で勝ってきた試合が多かったんです」と指揮官。最終回の攻撃では、その勢いを感じさせたが…。「及ばなかったですかね」

初出場。全国大会出場を決めたときには「とにかく楽しもう」という思いしかなかったというが、多くのチーム、地元の人たちから祝福とともに激励を受ける中で、その思いは変わってきたという。
「やはり出るからには、勝ちに行こう、と。全国制覇とか大きなことは言いませんでしたが、とにかく一戦一戦、自分たちのできることは、しっかり出して戦おう、そして勝とう、と」
組み合わせにより1回戦がなく、2回戦スタートとなった長浜。土居北JBC(開催地)を5対2で下して1勝し、この日の一戦へ。待望の全国初勝利は挙げたものの、緊張が解けるまではいかなかったか。
「そうですね。まだ浮足立ったところもあったかなあ…。もう少し、戦いたかったですね。私もまだ立ち直れなくて。ただ、ここまで連れてきてくれた選手たち、そしてご両親…。感謝しかありません」
泣き笑いの吉岡監督は、スタンドにあいさつを終えた選手たち一人ひとりに、感謝の言葉を掛けて回っていた。